理事長 佐藤伸彦先生

「自分でできることは
自分でやろう」から、
「みんなで一緒にやろう」へ

一般社団法人ものがたりの街理事長
佐藤伸彦

現実へのアンチテーゼとして、理想を追求

これまでずっと理想を追求してきました。理想とは現実へのアンチテーゼです。つまり、それは医療制度や病院組織などに対する不平不満でした。けれど、愚痴を言うだけでは1mmたりとも現実を動かすことができないことに気づきました。そこで、10年前に独立して「ナラティブホーム」を作り、ある程度理想の形を実現できると思っていました。しかし時代とともに現実が変わっていくに従って理想もまた変化していくものです。それに対応する形で今秋「ものがたりの街」を新たに開設しました。

時代が求める形を

太田地区は砺波市内では、近年まで国民健康保険立の診療所が残っていました。その場所に地域医療の再生を試みるための「ものがたりの街」を作ったのは、決して現在のコロナ禍などとは無縁のものではないと思っています、私が師と仰ぐ民俗学の権威・新谷尚紀先生は、「時代というのは誰かが出てくるから変わるのではなく、変わろうとしているときに必要な人たちが出てくる」とのご指摘を受けました。今ものがたりの街は、時代が替わろうとしているときに、忘れてはいけないものをしっかり残そうとしている取り組みだと実感しています。安心して近所の人たちと交流できる場・空間、デジタル化の中アナログ的な良さを残すこと、時代が求めているものではないかと思っています。

プラットホームから未来が始まる

「ものがたりの街」では、あえて老朽化した2つの蔵を残しました。それは太田を象徴する風景を残すためです。地域の皆さんに対して、心理的に安心できるものを作りたいという思い、お互いに思いやりを持って信頼関係を築きながら一緒に作っていきましょうという思いも込めています。

「ものがたりの街」は、あくまでも通過点であり、プラットホームです。ここからみんなで一緒に作っていって次の世代につなげていくことが重要だと考えています。10年後、20年後の太田地区や社会に、「ここは世の中に必要だったんだね」と言えるものを作り上げていきたいですね。建築にあたっては、「ナラティブホーム」が生まれる前からお力添えをいただいているスウェーデンハウスの方々に大変ご尽力をいただきました。「ものがたりの街」から、皆と一緒に未来への一歩を踏み出していきたいと思います。