その他

《私の医療・介護物語》その他

25.04.17

《私の医療・介護物語》第五話-2 佐藤伸彦

《私の医療・介護物語》 第五話
標題:その人らしさを引き出す
     ものがたり的共有感覚

 

一方、私たちもその人がどんな生き方をして来た方なのか知ろうともしていませんでした。

この家族と本人と医療者側のかい離を紐解くために必要なのが「ものがたり」ではないかと考えました。そう思ってからは看護師さんと協力して家族が来るたびにわざと部屋に行き、患者さん本人の過去や家族との関わり合いのものがたりを聞くように努力しました。

その人を知る努力をしようと全員で心がけました。

なかなか心を開いてはくれませんでしたが、半年も過ぎた頃から、家族が写っているアルバムを持ってきてくれるようになり、昔の楽しい話を病室でするようになってきました。

仕事のことや身だしなみにとても気を使っていたこと、家族を集めて食事会をすることが何よりの楽しみであったことなど、たくさんのものがたりをお聞きすることができました。それに伴って家族の対応がソフトになり色々と私たちにまかせてくれるようになりました。

これこそ「ものがたり」が持つ力です。その人の、人生のものがたりを共有することで「その人らしい」や「その人にふさわしい」という感覚を家族と共有出来ているという感覚が大事なのだと思います。
その方が亡くなられた時にその家族に「どうして嫌われると分かっていながらあんなことをしたのですか?」とお聞きしたところ、「あの人を守れるのは私しかいないと思っていました」と答えられました。
ものがたりを共有するということの大切さを学びました。そんなことを大事にする医療チームが高齢者の終末期には絶対に必要だと思い「ものがたりの街」を作ろうと多くの仲間を集め始め今に至っています。

 

ものがたりの街全景。砺波地方に合わせた建物(切妻型 瓦屋根)としている