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いかるぎ薬局日記その他

22.09.05

薬と食事のいい話⑥

月に一度、旧古民家診療所でいかるぎ薬局薬剤師による「くすりと食事のいい話」を開催しております。

 

2022年9月5日

今回は、「老化(糖化)を防ぐ食事のはなし」シリーズの5回目ですが、食事以上に効果が確実といわれている「運動」についてお話させていただきました。

「適切な運動の強度とタイミング」と題した話の概要は以下のとおりです。

 

はじめに、次の質問を皆様方にしてみました。

 

多かった答えは「③いつでも良い」でした。

確かに運動はいつ行ってもそれなりの効果が期待できます。ですから、質問の仕方が悪かったようです。「食後血糖値の上昇を抑制するためには、いつ運動するのが最も効果的ですか?」と質問すべきでした。

 

某製薬メーカーの答えは「食後1~2時間で運動するのが最も効果的です。」とwebページに書かれています。ですが、これは満点の答えではありません。

というのは、速効型インスリン製剤の注射やインスリン分泌促進剤の内服をしている糖尿病患者さんでは、食後2時間くらいに運動すると低血糖を招く危険があるからです。

運動の最適なタイミングは、食後血糖値が最高に達する前が最も効果的です。

 

耐糖能異常がない健常人では、食後血糖値が最も高くなるのは45分~60分後です。ですから、健常人の場合は食後30分頃に運動するのが最も効果的だと考えられます。

ただし、その運動量にも注意が必要です。

 

 

Hatamotoらの研究成果を紹介します。

被検者に3通りの運動をしてもらい、運動をしない時の血糖推移と比較しました。

4とおりの血糖推移を以下の図に示します。

食後30分から30分間の運動をすると、血糖値は顕著に低下します。ところが、食後70分以降に血糖値が上昇し、運動をしない時(対照)よりも高値になってしまいます。それに比べて、食後30分にわずか4分間の運動を行っただけでも血糖値は上がりにくくなります。この研究では、4分間の運動を30分おきに1日に20回行うのが効果的としていますが、実生活ではかなり困難な運動方法です。

 

そこで、もう少し現実的な運動方法を紹介します。

食後30分に運動するのは同じですが、その運動の内容は「踏み台昇降を10分間行う」だけです。身体活動度としては、4.9METsに相当します。10分間の踏み台昇降後の脈拍は110未満、体が少し火照る程度の運動です。

※ METsとは、身体活動の強さを安静時(1METs)の何倍に相当するかを表す単位です。

 

その効果は、以下のとおりです。

外に出かけられるのでしたら、速歩で10分間散歩するのも良いでしょうし、雨の日だったら室内でラジオ体操第1(卓球と同程度の4.0METs)とラジオ体操第2(水中歩行と同程度の4.5METs)を続けて行うのも踏み台昇降と同じような効果が期待できます。

 

ポイント! 食後血糖の上昇を抑える効果的な運動は、1.中強度の運動を 2.食後30分に 3.10分間程度 行うことです。