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いかるぎ薬局日記その他

22.10.10

薬と食事のいい話⑦

月に一度、旧古民家診療所でいかるぎ薬局薬剤師による「くすりと食事のいい話」を開催しております。

 

2022年10月3日
今回は、「老化(糖化)を防ぐ食事のはなし」シリーズの最終回で「嗜好品の摂取タイミング」についてお話させていただきました。
嗜好品は、1.コーヒー、2.栄養ドリンク剤、3.野菜ジュース、4.お酒 の4種類です。

はじめに、これまでの復習です。
野菜サラダや果物は食前に食べると消化がゆっくりとなるので、順番としてはどちらが①でも②でもOK。牛乳に含まれるホエイプロテインはGLP-1の分泌を促がして食べ物を胃から腸へ送り出す速度を遅くしたり、インスリンの分泌を促がして食後血糖の上昇を抑えたりするので、食前でも食中でもOKなので③とします。

では、コーヒーはいつ飲んだら良いのでしょうか?

下図を見てください。
コーヒーを食事(炭水化物75g含むGI値81の食事)の1時間前に飲んだ時の食後血糖推移を示します。●と〇の血糖推移に注目してください。

カフェイン入りのコーヒーを飲んだ時(●)は血糖値が急上昇しますが、カフェイン抜きのコーヒーを飲んだ時(〇)の血糖上昇幅は、ほぼその1/2です。


コーヒーは抗酸化物質(カフェ酸など)を豊富に含むため様々な病気の発症を予防することが知られており、糖尿病の予防にも効果があると言われています。しかし、フェインに関しては、食前に摂取するとインスリンの効果を減弱させて血糖値が上昇しやすくなります。よって、コーヒーは飲むのでしたら食後が良いでしょう。

カフェインを含むといえば、元気を出したいときに飲む栄養ドリンク剤が思い浮かびます。では、栄養ドリンク剤は血糖値にどんな影響を及ぼすのでしょうか?

ここで取り上げるのは3種類のドリンク剤です。下表の含有成分に注目してください。

リポビタンDは、カフェインとショ糖を含有する点がポイント。
リポビタンファインは、カフェインと人工甘味料を含有する点がポイント。
リポビタンノンカフェは、カフェイン無しでショ糖を含有するがポイントです。

それぞれのドリンク剤を単独で飲んだ時の血糖推移が下図のようになります。

リポビタンDもリポビタンノンカフェも血糖値は同じくらい上昇しますが、1時間後の血糖値はリポビタンノンカフェの方が低い点に注目です。
リポビタンファインはショ糖を使っていませんので、さすがに血糖値は上がりにくいのですが、60分以降を見てください。空腹時血糖値よりも低くなっています。これは、人工甘味料がインスリン分泌を促がして血糖値を下げたためです。
空腹時にリポビタンファインを飲むと低血糖になることがありますので、要注意です。

さて、これら3種類のドリンク剤または水を飲んでから1時間後に米飯150gを食べると血糖値はどうなると思いますか?

結論とその理由はこうです。。
⦁ リポビタンファインを飲んだ時の血糖上昇幅が最も大きくなりました。
理由:食直前の血糖値が空腹時よりも低く、体が危険性を察知し糖新生が行なわれているところに炭水化物を摂取したことと、カフェインによるインスリンの効果が減弱したためです。

リポビタンDを飲んだ時の食後血糖の上昇幅は水を飲んで米飯を食べた時(対照)よりわずか(約5mg/dL)に低くなりました。意外と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
理由:食前に少量の糖質を摂取しておくことは、インスリンの分泌や糖代謝を促すため、後から摂取した多量の糖質による血糖上昇に素早く対応できるため、カフェインによってインスリンの効果が減弱していても血糖値は上がりにくくなります。

リポビタンノンカフェを飲んだ時の血糖上昇幅が最も小さく、対照より約20mg/dLも低くなりました。
理由リポビタンD同様少量の糖質を事前摂取することによって、血糖を処理する準備が整っていたからです。当然、カフェインがないのでインスリンの効果は減弱しません。

ダイエット志向の人に人気のリポビタンファインは、意外や食前に飲むと血糖の乱高下にさらされる危険性があることがわかりました。

 

次に野菜ジュースです。
朝は何かと忙しいものです。そんな時に野菜サラダを準備するのは手間がかかります。もし、野菜ジュースで食後血糖上昇が抑えられるのなら大助かりです。

というわけで、用意したのは食物繊維豊富で余計な糖を一切添加していない野菜ジュース(野菜1日これ1本®)です。

米飯150g(糖質50g)を摂取した時に比べて米飯105g(糖質35g)+野菜ジュース200mL(糖質15g)を摂取した時の血糖値がどれくらい低くなるのかを確かめました。


どちらも摂取する糖質量は同じ50gです。

結果は下図のとおりです。

米飯単独(◆青線)に比べて米飯+野菜ジュースの同時摂取(〇紫線)は明らかに低いのですが、野菜ジュースを米飯摂取の30分前に飲んでおくとさらに低くなる(△緑線)ことが分かりました。

野菜ジュースをどのタイミングでどれだけ飲んだら最も効果があるのかを被験者10名に協力してもらって調べた結果➡食前30分に野菜ジュース(野菜1日これ1本®)200mLを飲むのが最も効果的だということが分かりました。

 

最後にお酒の影響についてお話します。
私が年末年始に持続血糖モニタリングシステム(FreeStyleリブレ®)を上腕に2週間装着して得られた血糖推移の中から抜粋してお示しします。


ご覧のように普通食(米飯200g+おかず)を食べた時に比べて忘年会でお酒を飲んでコース料理を食べた時の方が血糖値が低く推移しています。しかも驚くべきことに宴会が始まって2時間後に蕎麦を食べたにもかかわらず血糖値が上がっていません。その理由は、アルコールが体内の糖新生を抑制するためです。
かといって、お酒が体に良いわけではありません。アルコールや代謝物のアセトアルデヒドは細胞毒です。くれぐれもお酒の飲みすぎと肴の食べすぎには注意しましょう。

 

ポイント! 食後血糖の急上昇を抑えるためには、1.コーヒーは食後に 2.カフェイン+人工甘味料入りの栄養ドリンク剤には注意して 3.野菜ジュースは食前30分に200 mL(糖質量:約15g)を 4.お酒は適量(日本酒なら1合まで)を 摂取することが肝要です。