いかるぎ薬局日記その他
22.12.05
2022年12月5日
今回は、「便秘とその治療薬」についてのお話でした。
はじめに、今年8月に海外の学術誌に公表された便秘と認知機能についての研究成果を最近のトピックスとして紹介しました。
便秘のあるアルツハイマー病や軽度認知機能障害のある人は、認知機能低下速度が最大で2.74倍も高くなることが確認されました(CNS Neuroscience & Therapeutics, 2022.8.8)。これは、便秘による腸内細菌叢の変化が炎症反応などを介して中枢神経にダメージを与える「腸脳相関」によるものだと考えられます。
一般に便秘で悩んでいる人は女性に多いように思われがちですが、年齢を重ねるにしたがって男性にも多くなります。
便秘は、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。これによって、腸内の悪玉菌が増えたり、ストレスを感じたり、自律神経のバランスが崩れる状態が引き起こされます。
慢性の便秘は、器質性便秘と機能性便秘に区別されますが、私たちの多くが経験するのは機能性便秘です。
機能性便秘はさらに「排便回数減少型」と「排便困難型」に分けられ、それらは、下図に示すように様々な原因によって引き起こされます。
次に示すような薬を服用するようになってから便秘がひどくなった場合には、医師や薬剤師に相談して処方薬を変更してもらうか、便秘の薬を処方してもらいましょう。
病気や薬が原因でなくても排便を我慢することによって、便の水分が抜けて硬くなったり、直腸が鈍感になって便意を感じにくくなったり、悪玉菌が増えて腸内環境が悪くなりますから、排便を我慢しないことはとても大切なことです。
国際的な便形状の分類は以下に示すブリストルスケールが用いられます。
(ブリストル王立診療所の研究者によって提案されたものです。)
要は、便の形状にこだわらず、固さ(性状)を適切(タイプ3~5)に保つことです。
そのために心がける生活改善は、他の生活習慣病の予防にも通ずるものがありますが、便秘に特有なものは、「腹壁マッサージ」、「排便姿勢」、「排便習慣」でしょう。
それでも便秘に悩まされるようでしたら、いよいよ薬を使う必要があります。
便秘薬として、酸化マグネシウムとセンノシドは長年使われてきました。これらは安価でとても使いやすい薬ですが、腎機能低下者や高齢者に酸化マグネシウムを使っていると高マグネシウム血症で倒れる危険性がありますし、センノシドを毎日服用していると大腸黒皮症になり効果も得られにくくなってきます。
そこで、最近は便を柔らかくして排便しやすくする新薬(一般名でポリエチレングリコール、リナクロチド、ルビプロストン、エロビキシバット)を使うことが推奨されるようになりました。
新薬は高価なのが難点ですが、長期に亘って安全に使うためには、今まで服用してきた便秘薬を見直した方が良い場合があります。どんな治療薬を選択するかは、患者さんの病状や生活スタイルに合わせて医師が決めてくれます。
ポイント! 1.便の形状よりも固さに気をつけましょう 2.排便を我慢しない 3.病気の治療薬で便秘になることがある 4.腹痛のある便秘薬は毎日使用しないで、適切な薬を処方してもらいましょう
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