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いかるぎ薬局日記その他

23.03.09

くすりと食事のいい話「お薬かるたで知識の整理」⓾

くすりと食事のいい話(第10回)

 

2023年3月6日(月)

今回は、「お薬かるたで知識の整理」についてのお話でした。

 

はじめに、話題提供として新型コロナ感染症が5月8日より2類から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられることに関連してお話させていただきました。5類に引き下げられることになった理由の一つとして新型コロナ感染による重症化率と致死率の低下がよく引き合いに出されます。下図をご覧ください。

確かに新型コロナは、比較のために挙げたインフルエンザによる重症化率や致死率なみに低減してきました。これは、ウイルスの弱毒化と免疫獲得率の増加が大きく寄与していると考えられています。

60歳未満の新型コロナ感染者の致死率がほぼゼロというのは注目すべきことです。ところが、80歳以上の高齢者は感染すれば100人に1~2人は確実に亡くなっているということを忘れてはいけません。新型コロナ感染による致死よりも死亡者をしっかり頭に入れておくことが大切です。下図にはインフルエンザによる死亡者数と新型コロナによる死亡者数の経時的推移を示します。

インフルエンザによる死亡者数は1965年以降、1年間で4,000人を超えたことはありません。ところが新型コロナでは、2022年12月~1月にかけて約2万人の死亡者が出ているのです。そのほとんどが高齢者や基礎疾患のある免疫能低下者です。ということは、新型コロナが5類に引き下げられて、さまざまな制限が緩和されれば、身体的弱者がますます犠牲になるということが目に見えています。5類になっても決して気を緩めてはいけません。ワクチンの接種と人混みでのマスク着用は引き続き行っていただきたいと思います。

 

次に「お薬かるた(城西大学薬学部学生が作成)」を使って薬の知識の整理をしました。かるたは全部で46枚あるのですが、時間の関係で参加者に8枚のカルタを選んでいただきました。その8枚について、遂次解説させていただきました。

 

 「胃腸から吸収されます飲み薬」

たいていの薬は胃腸から吸収されて効果を発揮しますが、中には薬を服用しても胃腸から吸収されずに効果を発揮するものがあります。例えばそれは、消化管内殺菌や感染性腸炎の治療に用いる抗生物質です。効果を発揮する場が腸内なので、吸収されない方が都合が良いわけです。一方、飲み込んでしまうと効果が期待できなくなる薬があります。それは、心筋梗塞の時に舌下で服用するニトログリセリンです。ニトログリセリンは飲み込んでしまうと消化管からすみやかに吸収され肝臓ですぐに代謝されてしまうため心臓の冠血管を拡張する肝心の作用が発揮されなくなってしまいます。また、ニトログリセリンは、使用期限が1錠1錠の包装材料に印刷されているのも特徴的で、この使用期限を過ぎると効果が発揮されない可能性があるため、保管している錠剤の使用期限に気を配る必要があります。

 

 「お薬の相談乗ります薬剤師」

お薬に関することはもちろんのこと、サプリメント、食べ物や飲み物と薬の飲み合わせなど、何でも気軽に薬剤師に相談してみてください。私たち薬剤師は、皆さんのお役に立てるのが生きがいです。

 

 「風邪薬ちゃんとお水で飲みましょう」

風邪薬に限らず、薬は水または白湯で飲んでもらうのが基本です。ジュースや牛乳などといっしょに飲むと薬が効き過ぎたり、効きにくくなったりすることがあります。また、オレンジジュースといっしょに飲むと苦みを強く感じる抗生物質もあります。お酒と一緒に飲むことは絶対にやめてください。薬の副作用が強く出る可能性があります。「ほうじ茶」だったらいっしょに飲んでも大丈夫ですか?という質問がありました。ほうじ茶はカフェインやタンニンの含量が緑茶よりも少なく、薬といっしょに飲んでも大丈夫だと思われますが、基本的に薬はコップ1杯の水で飲んでいただくように心掛けてください。

 

 「鎮痛薬飲むなら何か食べてから」

抗炎症、解熱や鎮痛目的で使用される多くの鎮痛薬は、長期間服用すると胃潰瘍になったりすることがあるため、できるだけ胃の中に食べ物が入っている食後に服用したほうが良いでしょう。ですが、痛い時だけ飲めばよいような頓服的に使う場合は、必ず何か食べなくてはいけないというものではありません。何か食べてから服用すると、痛みが治まるまで服用後30分から1時間近くかかってしまうことがあります。鎮痛薬を連日服用する場合は食後に服用すること、と覚えておいてください。

 

 「泣かないでお薬きみの味方だよ」

たいていの子供は注射が大嫌いです。でも最近は注射の痛みをなくすために貼付用の局所麻酔剤を使うことがあります。これを貼って30分後くらいからは注射時の痛みを感じにくくなります。また、粉薬は不味いものが多いのですが、子供用の粉薬は味付け香り付けがされていて、とても美味しく飲めるものが多くあります。美味しくて、逆に子供が勝手に飲んでしまう危険性もあるので、子供に薬を飲ませた後は、子供の目・手の届きにくいところに保管することが大切です。

 

 「眠くなることがあります風邪薬」

市販の風邪薬や医療用の総合感冒薬の中には抗ヒスタミン薬といって、鼻水やくしゃみなどの症状を緩和する薬が配合されています。この抗ヒスタミン薬に対する感受性は人によって様々ですが、眠くなる頻度は高いと言ってよいでしょう。最近の医療用の抗ヒスタミン薬は眠くなりにくいものが多くありますので、鼻水などのつらい症状を抑えて、しかも眠くなりにくい薬が必要な場合は、受診されることをおすすめします。抗ヒスタミン薬が含まれていない市販の感冒薬もありますが、鼻水の症状は緩和されません。

 

 「保存場所湿気は大敵薬箱」

薬局で受け取るほとんどの薬は製薬メーカーで製造された包装材料の中に入っていますから、室内に保管していればほとんどの場合、数年は湿気を気にする必要はありません。ですが、包装材料から取り出して、薬局で何種類かの薬を1つの透明なポリ袋に入れてもらった場合(一包化)や粉薬を分包してもらった場合には、注意が必要です。処方された服用期間は大丈夫ですが、何カ月もすると吸湿して薬が変質する可能性があります。特に保管場所の湿気が高いような場合には、フタの閉まる缶などに乾燥剤と一緒に入れておくことをおすすめします。

 

 「もしかして飲み忘れかな確認を」

毎日薬を飲んでいると誰でも飲み忘れの経験をすると思います。そこで参加者の皆さんに飲み忘れを防ぐ一工夫をお尋ねしました。するとこんな方法を紹介してくださいました。1.カレンダーに薬をセットして薬を飲んだかどうかをいつも確認する。2.曜日の書かれたケースに薬をセットして飲み忘れを防いでいる。3.家族の方が薬を飲んだかどうかを確認してくれている。

皆さん、いろいろと工夫されているのですね。それでも薬が余ってしまった場合には、主治医にその旨をお話して処方日数を調整してもらってください。薬剤師も薬の服用日を分包紙に印字するなどのお手伝いをさせていただきます。薬は、無駄にせず有効に生かしていただきたいと思います。

ポイント! 新型コロナ感染症が5類に引き下げられても油断は禁物。ワクチン接種は必ず受け、手洗いや人混みでのマスクの着用は引き続き心がけましょう! 薬とその周辺の疑問は、いつでも気軽に薬剤師に相談しましょう。薬剤師は、皆様のお役に立てることをとても嬉しく思っています。