「広く浅い教養」で豊かに

私の医療・介護物語

25.06.02

「広く浅い教養」で豊かに

《私の医療・介護物語–佐藤伸彦》 第九話

 

最近は、学び直し、ということが言われます。
その背景には、昔と比べて今の社会が技術革新や経済変動が頻繁に起こり、それに伴って働く人への要求も変化してきていることが挙げられます。
そのため、従来の教育やキャリアアップの方法だけでは十分ではなく、働きながらも学び続けることが求められているからでしょう。
リカレント・リスキリング教育と言われるもので、これは個人のキャリア形成だけでなく企業や社会全体の発展にも重要なことと言われており、就職してからも生涯にわたって、教育と他の諸活動(労働・余暇など)を交互に行うという概念です。

学校に通っている頃は卒業のためや資格を取るために勉強していたように思います。
働き出してからは、時々会社からの指示でセミナー等に参加してみることはあるものの、自ら計画性を持って社会に出て学んでいる方は少ないのではないでしょうか。
そういう私も例外ではなく、施設基準を取るために仕方なく講習を受けるというようなことが多かったように思います。
しかし50歳を超えた頃から、もう一度学びたいという気持ちが強くなってきました。
もう一度と思うようになったのです。
そのときの思いは、医療の専門分野の最新の知識や技術のリカレント・リスキリングではなく、何か、もっと人生が豊かになるような、今の自分から自由になるための術(すべ)のようなものを学びたいというものでした。

まず最初に始めたことは、本屋で日頃は絶対に自分は買わないだろう、立ち読みさえしないであろう本を毎月一冊買って読んでみることでした。
手芸・ハンドメイドや農業経営の雑誌から金融関連の新書(その頃はビジネスや金融には全く興味がなく、カネ儲けは医療福祉では悪だとまで思っていました)、別マ(別冊マーガレット)のような少女漫画まで本当に多彩なものを読みました。
最初の頃は苦痛でしたが、次第にいかに自分が狭い世界で専門を深めようとしていたかに気づかされました。
そこで得られたものは、大学の教養課程やリベラルアーツと言われるものとは比較できませんが、単なる雑学や物知り以上の「情報・知識」であり、専門性を深めるために必要なことだと思います。私はこれを「広く浅い教養」と名付けてみました。
例えて言えば、狭い深い穴を掘る時に出てくる土を捨てる、広い浅い穴を周りに準備しながら進ことが大事ということです。その準備がないと、いつしか専門性という穴に埋もれてしまって上を見ることができず世間が見えなくなってしまうのです(良い言い方ではないですが専門ばかと言われています)。
この広く浅い教養は、一見今の自分の専門性と全く関係がないように見えますが、どこかで繋がっていたり、さらに視野を広げるのにとても役に立つことが多いのです。
本だけではなく、YouTubeといったWebメディア、今までは参加しなかった集会(〇〇カフェなど)に積極的に出向き、今自分がやりたいこととどのような接点があるのだろうかという意識を常に持ちながら今も浅く深く、広く狭く進んでいます。
専門を深めることはとても大事です。
そのためにも広く浅い教養を皆で学びませんか。そんな場を作ってみたいと思って計画を立てています。

 

専門性という穴を深めるためには、時々戻って掘った土を、穴の周りに教養で固めなくてはならない。
掘り続けるだけでは、いつか、また埋まってしまう。
専門を深めることはとても大事です。そのためにも広く浅い教養を皆で学びませんか